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弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田陽介
INTERVIEW

ユーザーにとって価値あるサービスを届ける仕組みとは

弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田陽介

会社の成長を肌で感じながら仕事に没頭した、ベンチャー時代

私は大学生の頃から「いずれ企業経営をしたい、新しいビジネスを作りたい」と漠然と思っており、「何かを作り出すビジネスができる会社へ行こう」と考え、新卒で三菱商事に入社をしました。三菱商事は非常に大きな会社で、大変優秀な先輩方・同期で溢れていました。一方で、今思えば若気の至りでしかないんですが、なんとなく10年先、20年先が見えてしまうような錯覚を感じてしまい、そこに「燃えきれない」自分がいることに気づきました。自分にとっては安定感のある大企業よりも、もっと不確定要素の高い仕事をした方が合っているのではないかと考え、入社半年でベンチャー企業への転職をすることにしました。とはいえどの会社へ行けばいいのか分からず、たまたま存在を知ったベンチャーキャピタルに入社をしました。

当時社会人1年目でしたが、入社1ヶ月で「投資先の成長の手伝いをしてきなさい」ということで、当時上場を目指していたカカクコムへ1人で送り出されました。まだカカクコムの社員数が5人や10人の時代です。

カカクコムでの仕事はものすごく楽しかったですね。
当時のカカクコムは、パソコンの通販価格を比較している「価格.com」というサイトを運営している会社でしたが、通販の広がりと共に価格.comのような比較サービスが世の中に求められ始めていた時でした。私の役割としては、保険や中古車買取の比較サービスといった新規事業を任せていただきましたが、自分たちが新しいサービスを作ることで世の中がどんどん変わっていくことを感じて、仕事に没頭しました。

凄い勢いで成長しているカカクコムで、自分もできるだけ早く経営の一角を担いたいと思っていました。役員にしてほしいと、当時カカクコムの代表だった穐田さんに直談判したこともありました。そして、29歳の時に取締役に就任しました。

弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田陽介

社長になる前から「自分だったらどう意思決定するか」を考えろ

取締役になって大きく違ったのは、事業を作るだけでなく、上場企業として株主の皆様との触れ合いのなかで会社を経営していく、という点でした。より一層意思決定の場面が増え、良い時も悪い時も経営判断を下さないといけない。経営陣の一員として責任をとらねばならない時もある。喜び、苦しみ、どちらもなかなか経験できないものでした。
そしてカカクコムに13年携わった後、自身で会社を設立したり、みんなのウェディング、弁護士ドットコムの代表を歴任するにしたがって、さらに難しい意思決定をしなければならない場面がどんどん増えていきました。
以前から穐田さんより「役員になる前から、社長になったつもりで『自分だったらどう意思決定するか』をシミュレーションできるかが、その先を決める」と言われていましたが、まさにその通りだと思います。

カカクコムで学んだのは、「ユーザー本位のサービス作り」です。価値の源泉はどこにあるのか、なぜそこに価値があるのか、を見抜く力は事業を成功させるうえで大切なのだと思います。
そして、健全なマネタイズも大切だと思っています。継続的に事業を成長させていくために、お客様に提供している価値以上の金額をいただいてはいけません。ユーザーにとって価値あるサービスを提供し、その価値に見合うお金をいただく、という回転を継続して大きくしていけるかが、経営者としての腕の見せどころだと思います。

価値あるサービスを作るには「時代を読んで仕掛けて待つ」

そして、ユーザーにとって価値あるサービスを作るには、弁護士ドットコム創業者の元榮太一郎がよく語る言葉ですが、「時代を読んで仕掛けて待つ」必要があります。この「待つ」ことができるための仕組みづくりが私はとくに重要なのだと思います。価値のあるサービスを世の中に送り出せたのであれば、どれだけ長く続けられるかが大切です。
弁護士ドットコムは、創業から8期連続赤字の会社でした。しかし元榮が、自身の弁護士事務所であげていた収益を弁護士ドットコムに投じ続けることで地道にサービス運営を継続してきました。その裏にあったのは「いつか必ず世の中から求められるサービスになる」という信念でした。

当時は司法制度改革により弁護士が増加しはじめており、かつては規制されていた弁護士が広告を打つことへの自由化も始まっていました。元榮は、インターネットを経由して、弁護士が困っている依頼者と出会う時代が必ずやってくるはずだと読んで、サービスを仕掛け、そして、粘り強く継続させてきた結果として、今があります。

そんな弁護士ドットコムも今や利益をしっかり出せる事業に成長し、そこであげた利益をウェブ完結型のクラウド契約サービスである「クラウドサイン」に集中的に投資しています。クラウドサインは、まだ赤字事業ですが、いつか世の中全体に行き渡り、新しい時代の契約プラットフォームに成長する大きな可能性があるのではないかと考えて投資を続けています。

このように、長く続けながら成長させられる仕組み作りの大切さは、カカクコムを経由して様々な方から学ばせていただきました。

起業はとてつもなく難しく、成功確率が低いものです。ですので、私としては誰にでも起業をお勧めする事はありませんが、一方で、「人生100年時代」の今、一つの会社で一生を終えるのが難しいのも事実です。自分の力を伸ばしていかにサバイバルできるかが重要になってきています。
経営陣に近いところで働くことや、起業をすることを通して、苦しい場面も含めて若い頃から経験を積むことは、今の時代に求められていることなのかもしれません。

プロフィール

内田 陽介
2000年慶應義塾大学商学部卒業。同年三菱商事株式会社入社。その後、株式会社アイシーピーに入社し、IT系ベンチャー企業への投資後における育成を担当。2000年12月より株式会社カカクコムに常駐。2003年11月に株式会社カカクコム入社、株式会社カカクコム取締役、フォートラベル株式会社取締役、株式会社コアプライス(現株式会社カカクコム・インシュアランス) 取締役就任。新規事業立ち上げ、価格.com運営などに携わる。2014年12月株式会社みんなのウェディング代表取締役社長兼CEOに就任。2015年10月弁護士ドットコム株式会社へ参画し、社外取締役に就任。2017年6月より同社代表取締役に就任。